臨時記号(♯や♭)はそれが付いた音符とそれが含まれる小節内の以降の音符では有効のままですが、時には臨時記号で変化した音をすぐに元に戻したい場合もあります。そのような場合には♮(ナチュラル)という記号を用います。ここではこの♮について説明します。
例えば図1のような譜面を考えます。この例では
となっています。
さて、ここで図1の譜面における1小節目の3つ目の音について考えます。この音符はその前の2つ目の音符の臨時記号の有効範囲内のためC♯として演奏することになるのですが、これを元のCで演奏したい、ということを考えます。その場合は譜面にどのように記せばよいのか。答えは♮(ナチュラル)という記号を用いることです。
♮は♯や♭といった変化記号によって変えられた音符の音を元に戻すという意味の記号です。その有効範囲に関しては臨時記号の♯、♭と同じく、♮が付いた音符以降からその小節の終わりまで有効となります。
たとえば、図1の譜面の1小節目の3つ目の音符を元に戻したい場合は次のようになります。
臨時記号としての♯や♭がオクターブ違いの音符には効果は無いことは前ページ「5線譜の読み方4(臨時記号♯と♭)」にて説明したとおりですが、♮も同様にオクターブ違いの音符には効果はありません。
例えば図3の場合は
となります。
ここまでで音符に直接♯や♭、♮といった記号がついた場合に、その音符が表す音について説明してきました。次に図4のように調号にも♯があり、臨時記号としても♯が音符に付いている場合はどうなるかを考えます。
図4の調号はト長調(ホ短調)を表しており、この場合はF音の音符をF♯として解釈する(演奏する)ことは5線譜の読み方3(調号と音符)のページで説明したとおりです。ところが、図4の第2音のFの音符には臨時記号としても♯の記号がついています。このようなとき、「調号の♯の効果と臨時記号の♯の効果が二重に掛かって、半音+半音=全音(1音)上がる」と考えてしまいがちですが、これは間違いです。
正解はF♯として解釈する、つまり半音上がるのみとなります。これについて次のページでもう少し詳しく見ていきます。