5線譜の読み方5(調号と臨時記号)

ここでは5線譜に書かれている音符が表す音について、調号と譜面内の音符の両方に♯や♭の記号が書かれている場合の音符の読み取り方について説明していきます。この場合の臨時記号の意味を理解することが少し複雑です。

確認

まず、「5線譜の読み方3(調号と音符)」のページと「5線譜の読み方4(臨時記号♯と♭)」で説明したことを確認しておきます。図1-1、1-2がそれぞれのページで解説したことです。図1-1、1-2においてFの音符がF♯になる理由がわからない場合は上記のページを先に一読して下さい。

  • 図1-1のように、調号の♯(または♭)はその記号が書かれている位置(線上または隣り合った2線の間)と同じ位置の音符と、その音符とオクターブ違いの音符の音を半音上げる(♭なら下げる)
  • 図1-2のように、楽譜内に書かれている音符に♯(または♭)が付いている場合は、その音符の音を半音上げる(♭なら下げる)

図1-1. キーがG(またはEm)のとき

options scale=0.9 options width=320 tabstave notation=true tablature=false key=G notes E-F-G-A/4 | text .10, E,F♯,G,A,| text ++, .12, ミ,ファ♯,ソ,ラ,| options space=30

図1-2. 臨時記号があるとき

options scale=0.9 options width=320 tabstave notation=true tablature=false notes E-F#-G-A/4 | text .10, E,F♯,G,A,| text ++, .12, ミ,ファ♯,ソ,ラ,| options space=30

♯が調号と臨時記号の両方に現れるときの例

上記を確認した上で、今度は以下の譜面の例と考えます。図2の中にはすでに答えを書いてありますが、その答えの意味に迷うところが1ヵ所あると思います。それが2つ目の音符の部分でしょう。キーがGのとき、F音の音符は調号の♯を受けて半音上がりF♯として演奏します。また、キーがCのときFの音符に♯が付いたら、その場合も半音上がってF♯として演奏します。これらを合わせて考えると、図2のFの音符は調号の♯と臨時記号の♯の両方の効果を受けて「半音+半音=全音(1音)」だけ音が上がることになりそうです。ところが図2では答えがF♯となっているので、半音しか上がっていません。なぜこのようになるのか、その理由は臨時記号の正しい意味を理解することで解決できます。

図2. ♯が調号と臨時記号の両方に現れるとき

options scale=0.9 options width=640 tabstave notation=true tablature=false key=Em notes E-F#-G#-A/4 | text .10, E,F♯,G#,A,| text ++, .12, ミ,ファ♯,ソ♯,ラ,| options space=30

臨時記号(♯や♭)の正しい意味

これまでのページでは♯や♭といった記号について、それぞれ「半音上げる」「半音下げる」としか説明していませんでした。もちろん、これはこれで正しいです。

問題になるのは、♯や♭の記号が臨時記号として譜面内に現れた場合です。♯や♭を臨時記号として使う場合、その正確な意味は以下のとおりです。

臨時記号とは、調号によって定められたその調の固有の音以外の音を臨時に使用するときに使う記号のこと。さらに臨時記号は、その調号が示す音に対して相対的に変化させる記号ではない

引用元 : 臨時記号 - Wikipedia

まず、上記の文における調の固有の音について説明します。


調の固有の音とは

例として図3-1にはハ長調(またはイ短調)、図3-2ではト長調(ホ短調)の譜面を記します。

図3-1. ハ長調の固有の音

options scale=0.9 options width=360 tabstave notation=true tablature=false notes :q C-D-E-F-G-A-B/4 C/5 | text .10, C,D,E,F,G,A,B,C,| text ++, .12, ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ,ド,| options space=35

図3-2. ホ長調の固有の音

options scale=0.9 options width=360 tabstave notation=true tablature=false key=G notes :q C-D-E-F-G-A-B/4 C/5 | text .10, C,D,E,F♯,G,A,B,C,| text ++, .12, ド,レ,ミ,ファ♯,ソ,ラ,シ,ド,| options space=35

図3-1、3-2はそれぞれ調は違いますが、書かれている譜面はまったく同じです。もちろん、同じ譜面でも調が異なるため、譜面内に書かれている音符が示している音には違いがあります。今の場合ならばFの音符がハ長調ではF音のまま、ホ長調では調号の♯を受けて半音上がりF♯となっています。これらが調の固有の音です。

つまり、調の固有の音とはその調において臨時記号が書かれていない場合に解釈するべき音のことを表しています。


臨時記号は相対変化ではない

次に、上の文の中の2つ目の赤字部分「相対的に変化させる記号ではない」について説明します。たとえば、図4-1を考えます。図4-1は調がハ長調であるので、図4-1の1つ目に示されている音符はF(ファ)の音と解釈し、これがハ長調の固有の音であることは上で説明したとおりです。2つ目の音符では1つ目と同じ音符に♯の臨時記号が付いてます。これはもちろんF♯の音です。

図4-1. ハ長調の場合

options scale=0.9 options width=320 tabstave notation=true tablature=false notes :q F-F#/4 | text .10, F,F♯,| text ++, .12, ファ,ファ♯,| options space=35

一方で図4-2の場合、調がト長調であるので1つ目に示されている音符はF♯(ファ♯)の音と解釈し、これがト長調の固有の音であることは上で説明したとおりです。そして2つ目の音符でも1つ目と同じ音符に♯の臨時記号が付いてます。ここで重要なことが、臨時記号はその調の固有の音に対して相対的に変化させるものでは無い、という上記の文です。何も知らない場合は、「♯無しの音を基準にして、♯が付いたらその基準音より半音上げる」と考えてしまいがちです。図4-2の場合ならば「2つ目の音符は♯が無いときの音がF♯だから、その音符に♯が付いたらF♯をさらに半音上げた音になる」と考えてしまうかもしれませんが、これが間違いです。答えは図に示してあるとおりF♯です。

図4-2. ト長調の場合

options scale=0.9 options width=320 tabstave notation=true tablature=false key=G notes :q F-F#/4 | text .10, F♯,F♯,| text ++, .12, ファ♯,ファ♯,| options space=35

臨時記号がある音符が表す音を考える際に「今は調が〜で、この場合のこの音符は〜。」として音を判断する方法は、その調の音を基準にしている考え方ですが、これが調に対する相対的な考え方になっています。既に述べたように、臨時記号は「調の固有の音に対して相対的に変化させるものではない」ものですから、このような考え方は間違っています。

調号は無視する

では、臨時記号のある音符はどのようにしてその音を判断すればよいのか、というと答えは調号を無視して音符の音を読み取れば良いのです。ここで、調号を無視するとは「調号に書かれている♯や♭による音の変化を考えない」ということです。例えば、図4−2の2つ目の音符ならば、調号を無視した場合はF音の音符です。それに臨時記号の♯が付いているのだからF♯というようにして判断します。


F♯を半音上げる場合は?

上で、「調号の♯と臨時記号の♯の効果を合わせて全音(1音)上げる」のは間違いだということは説明したとおりですが、それでは仮に「F♯の音符を半音上げたい」場合はどのように表せばいいのでしょうか。

この疑問に対する答えは、ダブルシャープという記号を用いる、です。ダブルシャープは、調号や臨時記号の♯によって半音上げられた音符をさらに半音上げるために使用されます。同様に調号や臨時記号の♭で半音下げられた音符をさらに半音下げるために用いられるダブルフラットという記号もあります。次のページでは、これらのダブルシャープ、ダブルフラットについて説明します。

5線譜の読み方6(ダブルシャープとダブルフラット) »

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