ここでは5線譜に書かれている音符が表す音について、調号にではなく譜面内の音符それぞれに直接♯や♭の記号が付いているときの音符の読み取り方について説明していきます。この場合の♯、♭といった記号は臨時記号と呼ばれ、調号に書かれるときのものとは区別して考えることを理解することがポイントです。
前のページ「5線譜の読み方3(調号と音符)」では調号に♯や♭が書かれている場合の音符の読み取り方について説明しました。今度は調号ではなく楽譜の中に書かれている音符のそれぞれに直接♯や♭が付いているときの音符の読み取り方について考えていきます。
まず、ハ長調(イ短調、またはキーがCかAm)のときの音符の音は以下のようでした。以下の図1を基準に考えます。
例として図2のような場合を考えます。図2には譜面内に書かれている音符それぞれが何の音を表すのか、その答えも一緒に記してあります。
図2を見たときに初学者が迷いやすい事項は以下のような部分だと思います。
以降ではこの2点について考えていきます。ポイントとなる音符に色を付けて表した図が以下の図3です。
まず図2(図3)を見たとき、1小節目の2つ目の音符の解釈は問題ないでしょう。この音符には直接♯が付いているので、直感的にもこの音符は♯を付けて解釈する、つまり半音上げて演奏するということが分かると思います。問題なのはその次に来る音符です。図2において1小節目3つ目の音符には♯が付いていません。ところが、この音符は♯が付いた音として解釈する、つまり半音上げて演奏するとなっています。
実は、楽譜の中に書かれている音符に直接付いている♯や♭といった記号は、その記号が付いた音符に効果を持つのはもちろんですが、それだけでなく、その記号が付いた音符よりも後に出てくる同じ音の音符にも効果があるのです。そのため、図2の1小節目2つ目の音符に付いた♯はそれ以降にあり同じ音の高さである3つ目、4つ目の音符にも効果をもたらしているということです。
さて、上述のとおり♯が譜面内に現れた場合は、以降の同じ音の音符にも効果があることは分かりました。しかし、その効果がそれ以降の曲全体で有効かというとそうではなく、音符に直接付いた♯の効果は1小節のみと決まっています。この有効範囲のルールがあるので、図2の2小節目の最初の音符(図3の緑色の音符)ではその前の小節で現れた♯の効果が切れて元の音に戻る、ということになります。
ここまでの説明はすべて♯が音符に付いた場合を例にしてきましたが、音符に付いた記号が♭でも同じです。唯一異なるものは♯がその音符の音を半音上げるのに対し、♭は半音下げるという意味を持つことのみです。
また、臨時記号の効果はその記号が付いた音符と同じ音にしか効果はありません。調号の♯や♭はオクターブ違いの音符にも効果を及ぼしましたが、臨時記号としての♯や♭はオクターブ違いの音符には無効なので注意が必要です。
たとえば図6の例を考えると、
となります。
ここまでの内容で、臨時記号はそれが付いた音符が含まれる小節の終わりまでは有効であることは分かりました。しかし、曲によってはその小節が終わるまで待てず、すぐに音符の音を元に戻したい場合もあります。次のページではこの場合について考えます。